2016年12月12日

栄太が立ち止


防波堤で話してたのが最後の記憶…かしら」
美桜里は考えながらそう告げた。
それを聞いて栄太とザンが顔を見合わせる。
美桜里は不安そうに栄太を見た。
大丈夫だよ、美桜里さん。おそらく一時的な記憶の混乱があったんだろう。外傷はないし、何があったかはこれからあの二人が話してくれるだろうしね。」
…あの二人って…?」
君を拉致した将司と文則だよ。彼らと会った記憶も一切ないのかい?」
…フミくんまで…。…どうしてそんなこと…」
退学になった逆恨みだろう」
…そう…。退学になったのは他にも色々悪さしてたのが出て来たかららしいけど…。フミくんまで巻き添えになってたのね…」
美桜里は心配そうに言いながらため息をついた。
…美桜里さん、何か飲まない?取ってくるわ」
ありがとう!そうね、言われてみれば、喉カラカラ!」
いつものように明るく笑う美桜里を見て少しホッとした早雪。
下の冷蔵庫空っぽだからな…。上から何か持って来るよ、待ってて」
早雪を制して栄太が診察室を出て行く。ザンもそれに続いた。
診療所を出て裏の階段へ向かう途中、栄太が立ち止まる。
…どう思う?」
……記憶がない…。嫌な台詞だ…」
ああ…。」
ザンの問いに栄太が表情を曇らせると、ザンも憂鬱そうに頷く。
本当に一時的に記憶が途切れたのかもしれないし、催眠やラストリゾート、スイートドリーム、もしくは類似した薬を使われたか…」
ラストリゾートがまだ残っているとは思いたくないが…どちらにしても…不穏だな…」
二人は答えが出ないまま2階の上がり、ひとまずミネラルウォーターを持って下に降りた。
診察室に入ると、美桜里はザンを見上げる。
彼女には会えたの?話した?」
会ったけど、話していない。それどころじゃなかったからな…」
そう。ごめんね、せっかくのチャンスを潰しちゃって」  


Posted by yyysam at 18:10Comments(0)